人の一生も宇宙…?

読書の秋・MAおすすめ本ご紹介記事シリーズ、今回はモクが担当いたします。
待ちに待った秋がやってきた、と思えば残暑がぶり返したり、スコールに見舞われたりで一喜一憂の日々を送っています。秋の味覚の代表格である秋刀魚も今年は驚くほど価格が高騰しているようで、今秋は例年通りの風情を堪能するのもなかなか難しそうです。ただでさえ、紅葉狩りなど、まだまだイベントごとへの参加も困難な状況なのに…。

と、秋に対する個人的な未練はこの辺りにして、早速主題へ移ります。私のお勧め本は青木新門『納棺夫日記』です。
この本はタイトル通り、納棺に携わる主人公の生活を綴ったものです。1970年代の富山を舞台にして、著者自身の体験がもとになっています。
小説の醍醐味といえば、自分の一回の人生では到底体験できないようなことがらを追体験できるという点かと思いますが、この本はまさにそれで、著者は仕事に携わりつつ自身の死生観までも宮沢賢治、親鸞などの思想を絡めて淡々と語っていきます。当時の葬儀の風景や故人を見送る方々の心情が語られているところも興味深い点です。

読んでいてとくに印象深かった点は、死に携わる仕事を担うことで主人公が差別的な態度をとられたり疎まれる対象になってしまうところです。(もともと彼にとっても「納棺」は金銭に困り果ててやむなく始めた仕事であったりします)そしてそれに対する苦悩や葛藤があるのですが、彼がある日そんな仕事に対する心構えを入れ替える場面があります。それまで適当な服を着ていたのをスーツに着替え、自身を「納棺師である」と称するようになると、それまで差別的なだけだった人々の態度が変わっていくのです。この変化については様々な要因があるとは思いますが、スーツの人に与える印象の力というのも強く感じさせる場面でした。

さて、ここまで読んでいただき「おや?なんだかあの有名アカデミー受賞作品に話が似ているぞ」と思った方も多かろうと思います。この作品から着想を得たというのは事実ですが、どうやらロケ地の変更や著者の強調したかったことの主題が変わってしまったことなどにより、タイトルを変えて上映することになったようなのです。とはいえ、そちらも素晴らしい作品には違いないので、ご興味のある方は二作品を見比べてみても良いかと思います。

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