手のひら中の宝石、鼻煙壺。

こんにちは、散歩が趣味のMAはるまきです。
名残惜しいことに、「北斎展」もいよいよ明日で閉幕。
この週末にはたいへん多くのお客様にご来館頂き、MAも大忙しです!
展示替え期間を挟んで、1月25日(土)からは、「大清帝国展」が始まります。
ということで、今日は清代の工芸品に関するトピックをひとつ。

さて、唐突ですが、受付ではよく「喫煙所はないの?」というご質問をいただきます。
当館では、資料保護や火災防止の観点から喫煙所を設けておりません。
ご不便をおかけしますが、どうかご理解とご協力を御願い致します。

近年、愛煙家の方は減っていると言われています。
(じつは、はるまきも一時期喫煙者でしたが、お金がないのでやめました。)
ほんの数十年前まで、日本社会では喫煙が社会的ステータスとされていました。
江戸時代には、人々はこぞって粋な意匠の喫煙具(煙草入れ・煙管・煙草盆などなど…)を身につけようとしましたし、近代に入ってからもモダンなシガレットケースが流行しました。
葛飾北斎も、《今様櫛きん雛形》という図案集のなかで、彫金師のための煙管のデザインを考案しています。

このように、日本社会の歴史の中では、煙草は基本的に「吸う」ものでした。
しかし、清代の煙草の楽しみ方は違っていました!
清代に主流だったのは「吸う」煙草ではなく、「嗅ぐ」煙草だったのです。
鼻から粉末をじかに吸引したり、鼻腔内に擦り込んだりして楽しんだようです。

したがって、煙草の形も今日われわれがイメージするような巻煙草ではなく、葉を刻んで粉末にした刻み煙草でした(これは日本の煙管も共通です)。
そのために、粉末状の煙草を持ち歩くための「鼻煙壺(びえんこ)」という工芸品が生まれました。

鼻煙壺の多くは手のひらサイズの小さな壺のような形状ですが、その小さな工芸品はひとつの宇宙と言ってよいほどの多様性を秘めています。
最大の魅力は、その材質と技法の多様さ。
最も一般的なのはガラスを素材としたものですが、透明なものから、天然石を模した複雑な色合いのもの、複数の色のガラスを重ねて彫刻を施したもの(「被せガラス」という技法です)、内側にペイントを施したもの…非常に様々です!!
また、高価なヒスイや象牙を彫刻したもの、木材に漆を施したものなど、ガラス以外の素材も多く使用されています。

中でも、ヒスイを模したガラス製の鼻煙壺には驚かされます!
複数の緑色のガラスを使って微妙な色合いを表現したり、金の粒を散らしたり…。
中国人にとっての、ヒスイに対する特別な思い入れを強く感じることができます。

現在の中国では、日本と同じように紙巻き煙草(最近は電子タバコのほうが多いのかも?)が主流ですが、鼻煙壺は今でも土産物として人気があります。
世界的にみると、公的な場での喫煙の文化は衰退・規制の方向性をたどっているようです。
しかし、かつての喫煙文化の煌めきの一部として、工芸品としての喫煙具の存在も忘れないで欲しいと思います。

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