早いもので、暦の上ではもう初夏!東京でも、夏を思わせるような暑い日もが増えてきましたね。私は、既に半袖デビューしちゃいました!!イベントが多い夏はもちろん好きですが、こんなにもジェットコースターのように季節が巡ってしまうと、四季が楽しめない気がしてしまいます。。。もう少しゆっくりと変わって!!!


さて、過去の企画展でも度々出展されてきた科挙の答案! 再登場です!!


  

こちらの答案、清代の乾隆37(1772)年の殿試において「第一甲第一名進士」に合格した江南徽州府歙県(現在の安徽省)出身の金榜(1735-1801)によって作られたものです。
どのくらいこの答案が素晴らしいのか、シリーズでご紹介していきたいと思います。
第一回の本日は、「決まり文句」がテーマです!!



周知の通り、科挙は中国の隋代に始まり、清朝末期(1905年)に廃止されるまで、約1300年間続いた官吏任用試験制度です。身分の上下・貧富の差なく、能力のある高級官僚を採用しようとしたところに意味があります。




殿試(最終試験)は皇帝自ら試験官となり、全責任を負う試験。その策(試験問題)はこれまでの試験とは違い勅語の形式がとられました。

問題用紙を開くと
「朕(=皇帝)が惟うに」という文言で始まっています。

次に
「爾ら貢士(受験生)は度々の試験に合格してきた天下の人材であり、今殿試に臨んで朕の質問に答えようとしている。朕は天子となって天下の政治に責任をもち、日夜いかにすれば人民が安寧に過ごせるかと心を砕いている。幸い、こうして爾ら貢士に質問する機会を得たので、次の問題について日頃の抱負を聞きたいのである」と。


その後、問題が記されています。

末尾には、
「爾らはこのよい機会に、誰にも憚るところなく思ったことを率直に記しなさい。もし遠慮したり萎縮したりして十分に思うことが書けなかったり、あるいは心にもないおべっかの言葉で責をふさぐようでは、かえって志に背くぞ!」と添えられています。




皇帝から出された問題に対する答案や意見具申書を作成するわけですから、答案は上奏文の形式がとられました。


そこで、「私目がお答え申し上げますが、私の聞きますところでは」という文言で貢士(受験者)は答案を書き始めます。

次に、
「天子は万機にいとまなく政治に励んでおられますが、その多忙な時間をさいて臣のような未熟のものにまで、古今の政治の得失に関する意見をご聴取になることは誠にありがたい幸せと存じます」と前置きを述べるのです。

それからようやく本論へと続きます。


末尾には、
「臣は末学の新進で場所がらをわきまえることを知らず、勝手なことを申し上げて天子の尊厳を冒し、身の置き場もないほど恐縮に存じます。以上謹んでお答えいたしました。」と添えます。



問題用紙にも答案用紙にも「決まり文句」が付されていたのがお分かりでしょうか?
目上の人に何か提言する際に、この文句を添えれば採用間違いなし?!
入り用でしたら、金榜の答案に記されている文句を書き写しにいらしてくださいね。

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