せんと。

「安政の大地震展」が始まって一週間が経ちましたね。
今回の展示では、日本の古代からの災害の記録を紹介しております。

今日は、展示品のひとつ、「ゆく川のながれはたえずして…」という冒頭部分の有名な、鴨長明の『方丈記』を中心にお話ししたいと思います!

『方丈記』の前半に、鴨長明が体験した五大災厄について書かれている部分があるのですが、
火事、辻風、飢饉、大地震に交じって、「遷都」も災厄に含まれているのです!
『方丈記』に書かれている遷都は、治承四(1180)年の、平清盛による福原遷都のことです。長明はこの急な遷都を、京都の町を荒廃させ、その上新しい都がいまだ整備されないうちにもとの都に戻して人々の憂いを招いた「災害」としてとらえていたのですね。自然災害ではなく人的災害というところでしょうか…。


…「遷都」に関連して、今回の展示品にもございます『日本書紀』の中にも、興味深い記述があるのでご紹介しますね( *´艸`)

『日本書紀』大化元(645)年12月の記述に、
天皇が難波に遷都しました。そうしたら、老人が、『鼠が難波の方に向かってぞろぞろと移動していたのは、今回の遷都の兆候だったのだ!』と語りました。
…という小話がございます。

現代ですと鼠はちょっと汚らしい…というようなイメージがあるかと思いますが、
古代日本人にとって、実は鼠は豊穣をもたらす存在でありました。
『日本書紀』での老人による言葉は、
「新しい都においても豊穣がもたらされますように…!」
という祈り、あるいは
「新しい都においてもきっと豊穣が約束されていますよ♡」
という予祝(前祝い)の意味も込められていたように思います。

…そう考えると、やはり遷都という事業には、「災害」になりかねない危険が常に伴い、だからこそ、祈りや予祝のような言葉が必要だったのかもしれませんね。



※今回のブログは、
・梁瀬一雄訳注『方丈記』(角川ソフィア文庫、2012)
・日本古典文学大系『日本書紀』(岩波書店、1965)
を参考にしました。

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