MODERN ASIAN STUDIES REVIEW Vol.5 新たなアジア研究に向けて5号
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アジア資料学研究シリーズ ・凍結乾燥法 ・目通し,風通し,紙の保存性評価法,強制劣化試験 ・劣化のメカニズム東伝製紙術と西伝製紙術の違いの起源江南 和幸 (龍谷大学名誉教授) 中国で出現した紙と発達した製紙術が他の地域に伝播していった経緯と,現存するトルファンと敦煌関係の紙資料の科学的分析から非伝播の製紙術を検証し,東伝と西伝の製紙術の相違点を明らかにすることで,その地域的特徴と紙の発展を歴史的に考察する。1.はじめに:紙の出現 ・原初の紙(ぼろ麻布原料),蔡倫による製紙術(樹膚を使った製紙法の出現)2.製紙術のアジアへの伝播:中国の周辺国への技術伝播と仏教の伝播の一環 ・中央アジア,ウイグル族,ベトナム,高句麗,日本:樹皮を使った先進製紙法3.ヨーロッパの製紙術(伝わらなかったアジアの先進製紙法) ・「羊皮紙」の長期間使用 ・アラブから伝わった「ぼろ布」原料の製紙法を19世紀初頭まで使用4.アラブへの製紙術の伝搬 ・ 751年タラスへの遠征で,アラブ軍に大敗し捕虜となった唐軍の紙漉き工人のサマルカンドへの連行により,製紙術を伝授 ・ぼろ布を原料とする製紙術 ・植物樹皮・草類靱皮繊維を原料とする紙つくりは非伝授5.トルファン旅団兵役文書の用紙 ・大谷探検隊の「兵役文書」 ・紙の分析:高解像度デジタル顕微鏡(キーエンスVHX500) ・旅団が使った紙:「麻ぼろ布」を原料とした紙 ・トルファン旅団の「紙すき工部隊」と「ぼろ布紙」の作成 ・旅団のインテリジェンス管理に不可欠の「紙」を,紙漉き工を使って遠征中に作成 ・東伝製紙術と西伝製紙術の決定的な相違:起源はトルファン旅団の兵站6.和紙とヨーロッパとの出会い:ヨーロッパの製紙法と日本の製紙法との違い ・東洋文庫蔵キリシタン版用紙は日本の雁皮紙。紙の実物の伝播と製紙術の非伝播  →ヨーロッパにおける紙の普及の遅れ ・紙つくりの相違,アジア:手漉き,家内工業,ヨーロッパ:手漉きであるが,半機械工業化が進む ・印刷・紙の相違点,アジアの薄い紙:彫版印刷による摺り,ヨーロッパの厚い紙:活字によるプレス印刷039

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