MODERN ASIAN STUDIES REVIEW Vol.5 新たなアジア研究に向けて5号
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1 概要 昨年度の書誌学講習会「漢字文献」で,中国を中心とした漢字文献がアジアの漢字圏でどのように受容,変化,影響を受けているかを考え,具体的に敦煌出土の漢字文献をとりあげた。今年度はそれに続き,敦煌発信の「非漢字文献」と,日本を中心としたキリシタン本の2つのテーマで,諸言語の文献とその研究について講義をした。 まず,昨年度の復習と今年度の序説として,石塚晴通氏により「コディコロジー―漢字文献と非漢字文献―」として,中国の漢字文献における異体字の特徴と地域性,漢字文化圏の広がりと発展,さらに紙の材料の科学的分析によるコディコロジー(文理融合型書誌学)的考察から東洋の書誌の材料について理解する。具体的には漢字の書体・字体・字形の定義,異体字率,漢字の草体化・省画化・増画化,書誌学的常識と紙の科学的分析を説明する。講義中,『梵語千字本』巻子本を展示し実見する。講義の後,同氏により東洋文庫の書庫を見学し,今年度のテーマである非漢字文献を中心として,代表的な書物を実見する。 順番として,非漢字言語のモンゴル語,ウイグル語およびチベット語へと続いて講義をするべきところ,講師の都合でスケジュールを調整し,先にキリシタン版についての講義を行った。 まず,白井純氏の「キリシタン版の印刷技法」で,キリシタン版と金属活字印刷について基本的知識を理解し,『ひですの経』と『こんてむつすむんぢ』を例に,キリシタン版国字本活字データベースから新たに判明した非量産型金属活字資料と,日本語の規範に反する特徴をみていく。 次に,豊島正之氏の「キリシタン版の紙と活字」では,紙と活字を書誌学的に検証し,校正におけるさまざまなエピソードについて印刷物を通してみることで,当時の印刷方法や技術について理解する。具体的には,白井氏の講義内容以外の内容として,判型,版式,紙,活字,校正,翻訳といった出版に関わる事項を説明する。 両氏によるキリシタン版の講義では,東洋文庫所蔵のキリシタン版『Flosculi ex veteris, ac novi testamenti』,『スピリツアル修行写本』および重要文化財『ドチリーナ・キリシタン』の複製本を展示し実見する。 キリシタン版の次に中央アジアの諸言語文献の書誌学について,ウイグル語,モンゴル語およびチベット語をとりあげる。 まず,松井太氏による「中央アジアの非漢字文献―ウイグル文献とモンゴル文献―」では,中央アジア出土のウイグル語文献とモンゴル語文献について,書誌学的な基本知識を理解し,その歴史的背景と地理的分布を把握する。東洋文庫ではこれらに関する一次史料を所蔵していないため,関連する参考書,工具書および解説書等42点を用意し,講義中に回覧して実見する。 岩尾一史氏の「中央アジアの非漢字文献―チベット文献―」では,チベット文献に関する書誌学的な基本知識を理解し,歴史的背景と発展の過程を見る。また,歴史資料としての研究とその展望を考える。東洋文庫ではチベットに関する一次史料を多く所蔵しており,その中で特に代表的な『写本大蔵経』『ナルタン版経部』『妙法蓮華経』を実見する。 この後,受講者として参加したキリシタン本の研究者である岸本恵実,折井善果両氏を交え,石塚氏の司会で前半はキリシタン本,後半は中央アジア諸言語文献に分けて専門的意見を中心に総合討論を行う。キリ[東洋文庫アジア資料学研究シリーズ 2013年度]東洋のコディコロジー(Codicology)II非漢字文献ArticlesConferences& LecturesResearchActivities042MODERN ASIAN STUDIES REVIEW Vol.5

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