新たなアジア研究に向けて6号
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  ・公文書:案(上諭,題本,奏摺,誥命など八旗関係,外藩関係,外交文書)  ・典籍:『満文老』『満洲実録』『八旗通志』『五体清文鑑』  ・碑誌:墓誌,墓碑,神道碑  ・満洲語文献と日本:荻生徂徠,高橋景保など満洲語研究3.満洲語文献と資料研究満洲語文献の所蔵機関,辞書,文法書満洲語史料の重要性:格・時制が明確,意味が確定しやすい,満文のみの記載や文書の存在,独自の社会・          言語空間を知る意義,共通語・国際語としての役割と意義満洲語文献への注目と,東洋文庫における満洲語文献の収集と研究中見 立夫(東洋文庫研究員・東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授) 世界および日本における満洲語文献に対する関心の特色および所蔵状況と,東洋文庫における満洲語文献の収集と研究について理解する。1.満洲語文献に対する着目のはじまり ロシア帝国,ヨーロッパ諸国,朝鮮王朝,琉球王国,日本2.世界に散在する満洲語文献 ロシア・ヴァチカン型,日本・米国型,モンゴル国3.日本の図書館等に所蔵される満洲語文献 東洋文庫,学習院大学,天理図書館,京都大学,大阪大学,東京外国語大学,関西大学など4.代表的満洲語文献 1)仏陀の教えを伝える『満洲語大蔵経』   高楠順次郎のテクスト校訂,フックスの調査 2)歴史を記す『満文老』『満文原』『満洲実録』『五体清文鑑』『内国史院』   中国第一歴史案館,訳註,東洋文庫本 3)旗人のおもいを伝える『百二老人語録』   満漢合璧鈔本,満洲語鈔本,漢語鈔本5.日本における満洲語文献に対する関心の特色 日本: 内藤湖南(最初の研究者),東洋史学者(清朝史研究者,清代モンゴル史研究者)が多く,言語学者は少ない(生きた言語ツングース系言語とシベ語への関心)。ただし,清朝・中国関係典籍・文物の保存では危機的状況 欧州:文献学を中心とした「満洲学」や「モンゴル学」の学問的系譜があるが,絶滅状況 北米:清朝史研究者の中に関心が現れる016MODERN ASIAN STUDIES REVIEW Vol.6

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