新たなアジア研究に向けて8号
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総合アジア圏域研究にしたがって、案袋を単位として、案棚に収め、番号を付けて保存する。 3、我々は20の村荘の計100冊ほどの完全な資料テキストを選んで編集・出版した。案資料の電子化・データ化の作業も継続して試みている。三、草の根は何によって声を発するのか―テキスト中の末端社会 1、資料が依託された対象や反映された内容から見ると、村荘の案資料の内容は村荘と村民の生産生活と社会的交流活動が中心であり、灌漑区域・供給販売合作社などの「単位」〔機関〕に依託された案資料の内容には特定のテーマに関係するという特徴がある。 2、大多数の村荘は階級成分登記表、完全な帳簿資料や上級からの文書を保存していたが、それぞれに特徴もあった。ある村では個人案が豊富で、ある村では村荘の活動を含む内容が比較的多く、ある村ではファイル化された上級からの案が完全に揃っており、ある村では帳簿が系統だっており、ある村では各種の経済活動に関する分類・統計が比較的詳細だった。 3、大まかには8つに分類できる。支部や民衆団体組織の文書、行政文書(上級からの文書を含む)、科学技術案、個人案、財務案、歴史案、内部資料、その他の類型の案資料である。四、集団化の回顧―山西農村社会の変遷 1、資料の収集・整理を実践する中で、次第に「フィールドや社会に向かう」という研究方法と学術思考が形成された。本質から言えばこれはある種の核心的な問題意識でもあり、豊かな含意を持つ。史料、研究内容、理論的方法の三位一体であり、相互に依拠しあい、相互に包括しあい、緊密に関連している。 2、中心となる関連研究は、公文書、公告や農村の末端文書、帳簿を総合的に利用し、政治史的発展というマクロな文脈を考慮しつつ、ミクロな農村の情景にも十分注意する。村荘、公社、県の領域あるいは独立した河川流域や水利システムを研究の単位とし、農業水利建設と農業技術、女性解放、医療衛生、日常生活といった面にも及ぶ。第2セッションコメント内山 雅生(東洋文庫研究員・宇都宮大学名誉教授)祁 建民(長崎県立大学教授) 第2セッションのテーマは「大衆・集団・国家」で、主に民衆と国家の問題を論じた。さきほど二人の先生はそれぞれ民間の手紙と農村の末端案の収集・整理状況について述べ、特にそれが現代中国研究に果たす重要な役割について言及した。彼らは民間資料の収集に尽力するだけでなく、関連するフィールドワークも実施し、手紙の作者あるいは資料を生み出した村落に対する実地調査を行い、文字資料と相互に裏づけをとった。これらはいずれも国家や政府の案文献の中から発見・理解することは非常に難しいもののため、彼らの研究は非常に重要ですばらしい。地方・民間の文献と国家・行政当局の案の間には一種の緊張関係が存在し、重視に値する。特に民間を主な対象とする社会史研究において、これらの文献を解読する際には、すでに社会構造の中に巻きこまれている民間および政治問題と一定の距離を保たなければならない。 私たちは民間あるいは地方の文献の使用に際しては、注意する必要があると考える。まずはこれらの民間あるいは地方の文献の中からどのように個人・局部と国家・全体の相互関係を理解し、研究の「細分化」を避けるかということである。個人と社会、村落と国家を結びつけて考えなければならない。しかもそこから過去の研究の不十分な点を見つけなければならない。この面では、日本の学界にはすでに、村落の文献を利用したよい研究がある。 日本の近世史研究にも「地方文書」と呼ばれる文献がある。主に室町時代から江戸時代の封建体制期に形成された、農村に関連する古い文書の総称である。たとえば神奈川県には、1868年時点で945の町村があったが、関連する古い文書は1972年までに合計25万件保存されている。東京大学の牧原成征は『近世の土地103
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