新たなアジア研究に向けて8号
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アジア資料学研究シリーズ5.キリシタン版  ローマ字本は例外なく雁皮紙(最高級版本の位置づけ),国字本は楮紙。 cf.[画像11]東洋文庫蔵重文『ドチリーナ・キリシタン』 1592刊   雁皮100%紙 以上,料紙の質が典籍の位相と深く関わることを示した。近世東西刊本に使われた用紙の比較研究江南 和幸(東洋文庫研究員・龍谷大学名誉教授)プロローグ 「私はイギリスの哲学者*とともに,三つの発明に注目したい。…私は印刷の技術について,火薬の発見について,および磁針の特性について,語りたいと思う。…磁針はわれわれの船を全く未知の地域に導いた。印刷文字は,あらゆる場所と,未来のあらゆる時代の学者たちの間に,知識の光の通信(コレスポンデンス)を確立した。そして火薬は,わが国の国境とわが敵国のそれとを防衛する建造物の,あらゆる傑作を生んだ。これら三つの技術は,地球の表面をほとんど変えてしまったのである」(ディドロ(Diderot, Denis)『百科全書』桑原武夫訳編,岩波文庫,1971刊)。* ベーコン(Francis Bacon),“NOVUM ORGANUM”, 1620(『ノヴム・オルガヌム』桂寿一訳,岩波文庫,1978刊)  「人類が足の前に置かれた貴重な発見…砲の火薬や絹糸や航海用磁針や砂糖や紙等々の発見…」,「印刷術,火薬および航海用磁針…この三者は世界の事物の様相と状態とを変革した」。(画像11)重文『ドチリーナ・キリシタン』(1592刊)×500。雁皮紙100%。溜漉。057

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