MODERN ASIAN STUDIES REVIEW Vol.9
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 ここでは,刊行地は,56地点に増えている。1500年代に比べて,3.5倍に増えている。書籍数は,223種,これも1500年代の27種に比べて,8倍に達している。アジアに対する関心がこの時期に急速に高まったことを推測できる。 ここでは,Roma,Milano,Napoliなど,前世紀に引き続き,イタリアが勢力を維持しているが,Amsterdam,Antversなど,オランダの都市が伸びている。この時期のアジアにおけるオランダの活発な植民活動を反映している。また,ポルトガルのLisbon,スペインのMadridなど,1500年代にアジアに進出した国々の都市が目立ってくる。また,フランスのParisが突出し,La Haye,Lyonなどもこれに加わってフランスの都市が目立つのは,学問の中心がイタリアからフランスに移ってきているためであろう。イギリスのLondonは,Parisに及ばないが,それでも東南アジア,中国関係書籍の印刷で,台頭し始めている。 Frankfurtを中心にしたドイツ南部も参入してきている。総じて,この時期では,大航海時代を反映して,ヨーロッパ各地でアジアへの関心が高まり,アジア関係の書籍が,ヨーロッパ全土で印刷されたといえよう。 (3)18世紀古書の刊行地 次に1700年代をみる。568種の多数に上る。地図とともに刊行地別書籍発行数の分布グラフを示す。 ここでは,1600年代に比べて,刊行地が82地点に増え,書籍数の合計は,568種に達する。ここに至って,アジアの関係の書籍は,ヨーロッパ全土で刊行されるに至ったわけである。イタリア(Venetia,Colonia,Milanoなど),オランダ(Amsterdam),スペイン(Madrid),ポルトガル(Lisbon)など,前世紀に引き続いて刊行を続けているが,新興のイギリス(London),フランス(Paris)の躍進が目立つ。この時期,ヨーロッパ全土にアジアへの関心が一層,高まるとともに,大航海時代を終えて,イギリスとフランスの二大強国によるアジア植民地をめぐる角逐が激しくなっていることを反映している。第5図B Morrison17世紀古籍刊行地分布図052MODERN ASIAN STUDIES REVIEW Vol.9

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